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漫画「キングダム」に学ぶ経営学! プロジェクトマネジメントの神髄(2)

2018/12/23
 
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こんにちは、さんちゃんです。

 

昨日に引き続き、

漫画「キングダム」に学ぶ経営学! プロジェクトマネジメントの神髄(2)

をお送りします。

 

昨日の記事は、こちらから。

漫画「キングダム」に学ぶ経営学! プロジェクトマネジメントの神髄(1)

 

概要を簡単に振り返ると、

今回の主役:「山民族の女王」楊端和(ようたんわ)

キングダム:

秦の始皇帝となる嬴政(えいせい)の若かりし頃のエピソードを描いた原泰久さんの大ヒット漫画(2018年12月現在、52巻発行、以下続刊)

キングダムは、チームマネジメントや、部署や組織を越えた”プロジェクトマネジメント”を担当されているビジネスパーソンにとって学ぶところが多い

テーマ:

楊端和のリーダーシップ、プロジェクトマネジメントに学ぶ

エピソード:

1.「列尾」城攻略~楊端和による城攻めの極意(47巻)…12/14公開

2.「遼陽」攻防戦その1~兵糧庫焼討におけるピンチの際の会議運営(51巻)…本日公開

3.「遼陽」攻防戦その2~絶体絶命のピンチの際の指揮と士気(52巻)…12/16公開予定

 

という感じです。

 

それでは、2回目「会議の運営方法」についてです。

 

昨日公開の「城攻め」をそのまま経験することは一般のビジネスパーソンにとってまず不可能です。

本日公開する楊端和による会議の運営方法は、ほとんどそのまま使えるのではないかというくらいより身近な事例といえます。

 

2.「遼陽」攻防戦その1~兵糧庫焼討におけるピンチの際の会議運営(51巻)

 

列尾城を攻略した秦国は、さらに敵国趙の王都圏に迫ります。

 

王翦(おうせん)・桓騎(かんき)・楊端和の秦国連合軍は、

王翦・・・朱海平原で趙国総大将・李牧(りぼく)と大決戦

桓騎・・・趙国第二の都市「鄴」の城を包囲

楊端和・・・「遼陽」にて李牧の右腕的立ち位置の舜水樹(しゅんすいじゅ)の軍勢と対峙

といったかたちで総大将・王翦により、3軍それぞれに役割が与えられます。

 

総大将・王翦の作戦の流れは、

秦国が「鄴」の城に迫る。

「鄴」を武力で攻め落とすことが困難であることがわかる。

桓騎軍に「鄴」を包囲させることで兵糧攻めをおこなう。

「鄴」を助けにくる趙国の軍勢を防ぐために、趙国の主力軍が配置されている「閼与」(あつよ。朱海平原)、「遼陽」に、それぞれ王翦軍、楊端和軍が対峙する。

というものです。

 

この趙国攻めは、武力による戦であるとともに、秦国、趙国の兵糧のどちらが尽きるのが先かという戦いでもあるのです。

 

楊端和たちは、遼陽にて、趙国・舜水樹の軍に加え、「趙国のなかでの独立国家」として活動していた犬戎(けんじゅう。山民族のひとつ。楊端和たちとの交流はない完全に別の部族)の連合軍と戦うことになります。

 

一進一退の攻防を続けていましたが、ある出来事をきっかけに楊端和軍は劣勢に立たされることになります。

 

それは、援軍として楊端和軍に配属されていた「壁」(へき。秦国の将軍)の軍が管理していた兵糧庫の場所を趙国に嗅ぎ取られて食糧の焼き打ちにあってしまったのです。

 

食糧が半減した楊端和の軍勢では、仲間内での小競り合いがおこり崩壊の危機を迎えます。

 

絶体絶命のピンチに直面したとき、楊端和による見事なまでの会議運営のマネジメントが展開されます。

なお、会話上登場人物が多数になりますので、適宜、簡略化しています(あわせて山民族の発言も漢字+ひらがな表記に変換しています)。

 

壁軍の兵士たち:「何だこの喚声」「どこかで戦ってるぞ」「敵襲だっ!!」

カタリ(楊端和軍メラ族の族長):「違う 内輪もめだ」

壁以下、一同:「へ!?」

※山民族が部族間で内輪もめをしている

カタリ:「昨夜くらいから始まっている 他族の馬を食うために奪っているのだ」

壁以下、一同:「えっ!?」

キタリ(カタリの妹。メラ族No2.的存在の女兵士):「皆 自分の馬は大切だからな よく見とけ平地のバカ共 飢えが進むとこうやって戦どころじゃなくなるんだからな あ 仲裁来た」

フィゴ王(楊端和軍フィゴ族の王):「どうする死王 このままでは三日でこの軍は崩壊するぞ 何か早めに手を打たねば」

楊端和:「分かっている どうせ兵糧もあと三日と持たぬしな …中略… バジオウ 全族長を今すぐ天幕に集めよ! 生きるか死ぬか勝負をかける作戦を伝える」

※死王:楊端和の異名のひとつ。山民族の多くは畏怖と尊敬の念を込めて死王と呼ぶ。

 

 

会議が始まる直前のエピソードです。

兵糧庫を焼かれた壁軍のところに、食糧を分けてあげるために楊端和軍メラ族のカタリ・キタリがやってきた際の一コマです。

意気消沈している壁軍は、叫び声を敵襲と勘違いしますが、山民族同士の内輪もめを目の当たりにします。部族同士が別の部族の持つ馬を盗んでは食べているという状況です。

このままでは飢えと仲間割れで軍隊が崩壊するといったところで、会議の招集がかかります。

 

※天幕のなかでは、山民族の族長たちと壁たちがいます。

族長たち:「こいつか食い物焼かれたバカは!」「こいつらのせいで俺たち飢えてんのか」「何でここにいるんだこいつは」…中略…「食糧を失ったバカは首を斬られて当然だ」

※楊端和により、平地の者(この場合、壁たち)を斬ることを禁じられている。にも拘わらず、

カタリ:「(平地の者を斬るのは)”死王の禁”だぞ」

ラギ族長(楊端和軍ラギ族長):「ふっ それがどうした 知ったことか ん!?」

 

「ん!?」

ふり返るとそこに楊端和が。無言のまま顎にパンチを入れて脳を揺らします。ラギ族長が跪いたところに顔を蹴り上げます。族長たちがその圧倒ぶりに驚くシーンが展開されます。

倒れたラギ族長にまったく意に介さず、族長たちを前に楊端和の檄が飛びます。

 

楊端和:「そろってるか族長達」

族長達:「死王」「死王」

楊端和:「食料はあと三日分だ

族長達:「三日分!?」「三日分だと!?」

楊端和:「やかましい この状況で我々には二つの選択肢しかない 一つは今すぐ撤退して死に物狂いで西の我らの山界まで逃げる道」

壁たち:「!!」「えっ」

楊端和:「二つ目は残るこの三日で敵を討ち破りその食糧を奪い取る道だ

キタリ:「だったら一択だろ

楊端和:「そうだなキタリ もちろんもし前者を選ぶ声をあげる者がいたらこの場で首をはねるつもりでいた」

エンポじィ(楊端和軍猿手族の族長。楊端和をマンタンワと呼ぶ長老的存在):「ちょっと待てマンタンワよ 敵を討って食糧を奪うということは三日であの天然の城を落とすと言っておるのか?」

楊端和:「……そうだエンポじィ」

エンポじィ:「それはいくら何でも無理な話じゃ この八日の戦いでも一体何人いるか分からぬ程に湧いて出てくる敵の前に儂らは城に近づくことすら出来ておらぬではないか」

楊端和:「難しいのは重々承知! 故に明日からは大いなる”犠牲”… 我らの身を切る作戦で挑む必要がある

フィゴ王:「もったいぶるな死王 作戦があるならさっさと言え」

 

いよいよ会議が始まりました。

まずは、小競り合いの続きといった感じです。楊端和が来るまで族長たちが苛立っています。矛先はもちろん兵糧庫を焼かれた壁です。きつい言葉が飛び交うなか、一人の族長が剣を抜いて壁に迫ります。

 

そこに、楊端和登場。族長をパンチとキックで瞬殺します。

 

ポイント1.強いリーダーシップ

一つ目のポイントは、圧倒的な武力です。支配力といってもいいかもしれません。

その後の会議のなかでもありますが、族長たちの不満やクレームに「やかましい」と一喝します。

今はそんなことを言っている時ではない、やっている場合ではない、という確固たる意思の表れといえます。

プロジェクトマネジメントで殴る蹴るはあり得ないですが、混乱しているメンバーに対してリーダーの強い意思と発言は信頼を醸成することになります。

 

ポイント2.悪い情報をはっきり伝える

そしてふたつ目のポイント。

最初に食糧の残り日数をはっきりと伝えています。悪い情報こそ迅速かつ正確に伝えることが大切となります。一瞬ざわつきますが、しっかり情報共有することでやるべきことが明確化します。

 

ポイント3.選択肢を提示する

そのうえで、選択肢をふたつ提示します。これがみっつ目のポイントです。

退くか戦うかといった単純な二分法です。そこにキタリが呼応することで戦う流れになります。

このあと長老格のエンポじィとのやりとりがありますが、ひとまず置いておいて、ここでのポイントはリーダーが選択肢を複数提示することで部下に決定をさせるというものです。

 

シンプルに二分法で問いかけるところも強いリーダーの証と言えます。

記憶に新しいところでいうと、小泉純一郎元総理の痛みを伴う改革として話題になった「郵政民営化」と通ずるところがあります。

 

民営化に賛成か反対かという二者択一を迫りました。

そして、賛成≒改革推進の正義、反対=既得権益にしがみつく悪、といった図式をつくりあげることに成功します。

小泉元総理の言動や行動には当時から賛否両論あったわけですが、強いリーダーシップで国民を引っ張っていったという点に関しては紛れもない事実として後世に残ると思います。

 

また、実質的にはリーダーの意図する行動が選択されることになるのですが、メンバーにしてみれば自分が選択したといえる状況は、その選択への責任感につながります。

 

キタリの発言がまさにそのことを表現しています。

楊端和の提示した2択は、強大な敵と戦うという意思やその結論を全員で共有する効果があります。

 

さて、会議はここから作戦の中身に入っていきます。

 

作戦を簡単に言うと、犬戎王の血族である3兄弟を倒すというものです。

3軍あるので、楊端和軍も3つに分けて戦うことになります。

楊端和軍の分け方は、(1)バジオウ率いる楊端和直下の軍隊、(2)フィゴ族、(3)メラ族です。

どれだけ血を流すことになろうとも、犬戎3兄弟を倒すと檄を飛ばします。

 

話がまとまりかけていたその時、壁が口をはさみます。

 

壁:「お待ち下さい!! ど…どうして…どうしてですか わ…私のせいでこんな苦境に…さらに明日は多大な犠牲を伴う戦いを… いや…そもそもこれは秦と趙の戦いであるのに… どうして我々のために自らが飢えてまで食糧を分け与えてくれて… どうして山の民のあなた方がそこまで血を流してくれるのですか

楊端和:「今さらそれを聞くのか 壁 とうの昔に お前は戦友(とも)と思っていたが

壁:「!! …… ……端和殿 ならば!我が軍も等しく命を…いや当然それ以上に命をささげて明日戦いまする ゆっ 故に大将楊端和様 どうかっ… どうかわたしに挽回の機をお与え下さい 明日の三軍の一角をどうかわたしの軍にお任せ頂きたい!! どうかお願いします この壁 もう決してあなたを失望させることは致しませぬ!!

楊端和:「いいだろう 一部作戦変更 明日の主攻三軍の一角はメラ族と壁軍を入れ換える!」

壁:「!!」

楊端和:「ただしもう失敗は許されんぞ壁将軍

壁:「ありがとうございます!!」

 

活字だけでは伝わりにくいですが、楊端和と壁の表情や吹き出しの様子から、熱のこもったやりとりが展開されているのがわかります。

 

失敗の当事者である壁には一言も触れなかった楊端和と、それに対してこみ上げてくるものがある壁。少年漫画らしい展開と言えなくもないですが、やはり魅力的なシーンです。

 

ポイント4.利害関係を超えた関係

作中にはありませんが、というより「ないということがあった」わけですが、楊端和は壁に対して、兵糧庫焼き打ちについて一言も発していません。失敗に対して、責めたり、怒ったり、さらし者にしたりといったことをまったくせず、残された兵力でどう戦うかを伝えます。

 

それに対して、壁が叫ぶわけです。どうして自分たちの戦いに山の民がそこまで尽くしてくれるのか。

楊端和の回答は、戦友(とも)だから。

この発言もシンプルです。それ以上何かを言うわけでもありません。たった一言で壁の心に響くことになります。

 

部署や組織を越えてプロジェクトチームを運営するということは、利害関係が異なる集団をマネジメントするということです。リーダーが自分や自社の利益だけを考えて打算で動けばプロジェクトメンバーもそれに呼応するように必要最小限の力しか発揮しないということはよくある現象です。

友達じゃないか、は言い過ぎかもしれませんが、”情けは人のためならず”(他人に施すことが目的ではなく自分自身のために最大限力を発揮すること。それが巡りめぐって自分に利益をもたらす)という言葉もあります。

関係性を構築するまでは”Give&Give”の精神が大切になってくるかもしれません。

 

ポイント5.モチベーションを最大限に引き出す

楊端和の戦友(とも)という言葉を聞いた壁は、自らの軍隊を三軍に組み入れて欲しいと陳情します。

静かに発言を聞いていた楊端和は、最後に少し笑みを浮かべながら壁の陳情を了承します。

 

このように部下が自ら「この仕事がやりたい」、「任せて欲しい」と訴えかけてくるようなシチュエーションをつくることが大切です。おそらく最も難易度が高いモチベーション・マネジメントのひとつだと思います。

それでも、このように自ら発言して勝ち取った仕事は一生懸命になるのが人間の本質です。

計画をあっさり変更できる柔軟性、最後に次は頑張れと声をかけるやさしさとともにリーダーであればぜひ身につけたい能力(というか技法。より適切なのは作法かもしれません)ではないでしょうか。

 

本日はここまでです。

三つ目のエピソードは明日公開します。

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