ゴールなき戦いに挑む、棋士・羽生善治にみる勝負術・常勝の秘訣とは!
こんにちは、さんちゃんです。
本日は雑誌『日経ビジネス』2019年3月11日号より、編集長インタビュー「ゴールなき戦いに挑む[将棋棋士]羽生善治氏」を読んでの感想を書いていきます。
近年では、藤井聡太七段の活躍もあり、将棋が盛り上がっています。
第一人者である羽生善治九段のインタビューから、勝負術・常勝の秘訣に迫ります。
棋士・羽生善治九段のプロフィール
将棋界の第一人者として30年以上もトップ棋士として活躍されていますので、ご存知の方も多いと思いますが、あらためて羽生善治九段のプロフィールを示します。
1970年、埼玉県所沢市生まれ。
小学6年生でプロ棋士養成機関「奨励会」に入会した。中学3年で史上3人目の中学生プロ棋士。19歳で初タイトルを獲得(竜王)し、25歳で史上初の7大タイトル独占を果たした。47歳で史上初の永世7冠。これまで獲得したタイトルは通算99期に及ぶ。2018年12月、通算100期をかけた第31期竜王戦7番勝負で挑戦者の広瀬章人八段に敗れ、竜王を失冠、27年ぶりの無冠となった。出所)『日経ビジネス』2019年3月11日号
昨年、27年ぶりの無冠となったときには、通常の段位である「九段」で呼ぶのか、獲得している「永世称号」で呼ぶのか、大いに注目されました。
将棋連盟会長の佐藤康光九段(羽生九段と同世代でともに切磋琢磨したトップ棋士の一人)から呼び方を確認された際に、あっさりと「九段」を選択されました。
現役への強いこだわり、虎視眈々とタイトル復冠を狙っており名誉称号の祭り上げられるような扱いを嫌っている姿に勝負師としての矜持がうかがえました。
将棋の強さと局面への没頭
1.ある種のいい加減さ、柔軟な性格が大切
思いつめる性格の人には棋士という職業は向かないと羽生九段はいいます。
団体競技やスポーツでは、チームメートのミスや審判の判断、風向きなど、言い訳できる余地がありますが、将棋にそれは一切ないため、突き詰めると自己否定になってしまいます。
そのため、棋士の性格として、ある種のいい加減さ、柔軟さが大切であるといいます。
2.将棋の強さと戦いのメタファー
羽生九段は、将棋の強さを3段階に分類し、そのときどきの指し手の思考について次のように表現しています。
第一段階:覚えたてのころは、指したい手がいっぱいある。
第二段階:経験を積み重ねると、一番いい局面をつくる手順を考える。
第三段階:対局者が互いに一番いい局面を繰り返すプロ同士の対局では、打つ手がなくなる。
打つ手がなくなった(=いい形が出来上がった)あとに、手を替え品を替えて局面を打開していかないといけないが、プロ同士だと有効な手段が見いだせないケースに陥ることがほとんどとなります。
羽生九段は非常にわかりやすいメタファー(比喩的表現)を使って表現しています。
羽生九段の言葉を借りると、「要するに後出しじゃんけんの状況を作りたいんです。」となります。
互いに「歩」(前にひとつずつしか進めない最弱の駒)1枚ずつで対局すると、必ず先番が負けます。それを少し複雑にしただけだといいます。
そういえば、対局を開始する最初の盤面が最も美しく強いバランスの取れた陣形であり、一手指すごとに弱体化するといった棋士もいらっしゃいました。
このような考え方や状況は将棋に限らず、習熟度と視野の広さ、戦略・戦術のつくり方など、一般的な仕事や学習にも通ずるところがあります。
初心者の段階は、覚えた知識やテクニックに対して、あれもこれもとやりたいことがたくさんあります。それをとにかく追及する段階ですので、自分自身のことだけ考えている状況です。
中級者になると、自分がやりたい内容だけではなく、相手がやりたい内容についても把握できるようになります。協力して最善を目指すような感覚で相対的な最善を探る段階です。
上級者になって、時には最善の状況を崩すことも含めて絶対評価と相対評価を行き来しながら、自身の優位をどのように築くかという微妙な駆け引きがものをいうようになります。そこにはプラスの作戦だけではなくマイナスの作戦も織り込みながら相手によりマイナスの行動を促すというような高等戦術も必要になってきます。
3.10代、20代、30代、40代、50代における戦い方
羽生九段は、10代のときには10代の強さがある。20代、30代と、そのときそのときの強さがあると考えています。
もうすぐ50代になる羽生九段ですが、50代では「培ってきた経験値をいかに具体的な強さに変換していくのかということが課題」と指摘されています。
また、時代とのマッチングの大切さについて次のように語っています。
将棋は時代とのマッチングが大事です。現役のプロ棋士は160人くらいいいますが技術面でそれほどの違いはありません。違いを生むのは、そのときのはやりの戦法と自分のスタイルがどれくらいマッチしているかということです、トレンドに合わせ過ぎると持ち味や個性が死んでしまうので、そこは残しながら現状に対応する。あるいは今後に向かい努力する。私は「オールラウンダー」と評されることがありますが、自分なりにトレンドに対応していくうちに必然的にいろいろな作戦を取るようになっているのかもしれません。
出所)同上
たしかに羽生九段は、得意戦法に特化したタイプではなく、どのような戦型の将棋でも強さを発揮するオールラウンダーです。
ここからも、先のインタビューで答えていた「柔軟な性格」の大切さがよくわかります。
そのときどきのトレンドと自分の戦い方を柔軟に調整していることがうかがえます。
そして、プロになるかならないかという若手の棋譜をよく見ている、AIやソフトの将棋もよく見ていると答えています。
新しい発想、着想に対して常に柔軟な気持ちで吸収しようとしているところに第一人者の第一人者たる所以がみてとれます。
さらに、目指すべきゴールはどこに設定しているのか、何のために将棋を指しているのか、という質問に対しては、ゴールはない、答えは出ない、と回答しています。
羽生九段ほどの人物ですと、それなりに取り繕った回答を用意することは造作もないことだと思いますが、それっぽい回答をするのではなく、ここでも柔軟に回答するという一手を繰り出しています。
そして、だからこそ、あまり考えても仕方がないので、目の前の一局一局にこだわり大切にしたいといいます。
この一つひとつの積み重ねこそが羽生善治九段の強さの秘訣といえるかもしれません。
棋士・羽生善治に学ぶ勝負術・常勝の秘訣!
羽生善治九段のインタビュー記事から感じた勝負術・常勝の秘訣をまとめると次のようになります。
1.新しいことに好奇心を持ち、最先端の情報や若者の思考についても柔軟な姿勢で吸収する。
2.自分の強みの研鑽と外部環境のトレンドの変化に対する視点を併せ持つ。
3.目の前の戦いを一つひとつおろそかにしない。
これらのことは仕事や生活すべてにおいて活用できるメッセージではないでしょうか。