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新卒一括採用見直しへ産学協議会が提言! 最大の論点は「就職率が低下するかどうか」にある!

 
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こんにちは、さんちゃんです。

 

2018年10月に経団連の中西宏明会長が、新卒一括採用のあり方の見直しに言及して約半年、産業界と大学による協議会で「採用方法の多様化」について提言をまとめました。

 

産学協議会が「採用方法の多様化」を提言!

企業の採用のあり方などを議論する経団連と大学の産学協議会は22日、春の新卒一括採用に偏ったこれまでの雇用慣行を見直し、通年採用の拡大など採用方法の多様化を進める方針を盛り込んだ提言をまとめた。

…中略…

提言では、これまでの一括採用に加え、新卒、既卒を問わずに専門的な知識を重視して通年採用する「ジョブ型採用」を含め、「複線的で多様な採用形態に、秩序をもって移行すべき」だと強調。人材の多様性確保などに向け、外国人留学生や日本人海外留学経験者、大学院生を積極的に採用する方向性も打ち出した。

出所)「新卒一括採用見直し 産学協議会が提言 経団連会長「多様な経験望ましい」」毎日新聞2019年4月22日配信

 

経団連の中西宏明会長は22日の協議会後、「企業側は留学など教室で学ぶ以外の(より多様な)経験を積んだ学生が望ましいとのメッセージを伝えていく必要がある」と述べた。一方、協議会の座長を務める山口宏樹・埼玉大学長は「(就職活動の)長期化や早期化(で学業がおろそかになる問題)が生じないよう、しっかり対応していきたい」と語った。

…中略…

通年採用は、企業にとって経営環境に応じて柔軟に人材を確保できるメリットがある。一方、既卒者や海外留学した学生も、一括採用と別のスケジュールで就職活動をしやすくなる。ただ、採用活動の長期化で、中小企業などの負担が増す懸念もありそうだ。

出所)同上

 

経験という言葉に隠された意図!?

新卒一括採用の弊害

新卒一括採用における弊害は、従来から繰り返し指摘されてきました。

 

たとえば、

●就職活動・採用活動がその年度の景気動向に大きく左右されること
●大手有名企業に求職者が集中し中小企業には求職者が集まらないなどの雇用のミスマッチが発生しやすいこと
●一度新卒という立場(レール)から外れた人にとってはその後の就職活動で大きな不利益を被ること

などが代表的な弊害としてあげることができます。

 

そして通年採用とすることで、産業界も学生側もより自由度が高く多様な経験を時間をかけて評価できるというのがメリットとされています。たとえば就職活動の時期と重なるために留学をあきらめるといった学生にとっては朗報といえます。

 

産業界は新卒学生に何を求めてきたか

そもそも産業界は大学教育に多くの期待を寄せていないことはよく知られています。

 

そのため、経団連の中西会長ははっきりと、教室で学ぶ以外の経験を積むことが望ましいと言及されています。

 

この「経験」という言葉は、わかったような気持ちになるので注意が必要です。

数年前まで景気低迷期で今のような新卒採用が売り手市場ではなく買い手市場だった時期は、産業界による「即戦力」採用といった言葉が新卒採用でも多く使われていました。

 

しかし、多くの企業にとって実質的に新卒学生に期待しているのは、即戦略や経験といった能力に関連したものではなく、「真っ白で素直な人当りの良い人物」といった態度に関連したものです。総合力、人間力などと言われたりもします。

 

要するに「経験がないこと」が新卒学生の絶対的な条件であり、入社後にすべての教育を一から自社でおこなうことが当然視されてきました。

 

即戦力採用という用語が流行したときも、実質的にはクラブ活動、アルバイト、インターンシップ、留学経験などから「自社において早期に戦力として働くことが認められるとみなす」という程度の位置づけだったわけです。

 

ここであらためて「教室で学ぶ以外の経験」という言葉を使用しても、新卒採用で評価される項目にはあまり大きな変化は起こりえないと考えられます。

 

すなわち「多様な経験を積んだとみなす総合力や人間力といった全体的な何か」が評価の対象となるわけです。

 

通年採用の実現に向けた最大の論点~未経験者優遇による高い就職率が低下するおそれ~

採用条件は変化するのか?

協議会は今後、作業部会を設け、現行の採用形態から多様な採用形態へ混乱なく移行するための方策を検討する。また、インターンシップ制度の拡充策や、同制度を通じて得た学生情報を採用活動に利用するための条件も検討する。

出所)同上

 

前述のように、「インターンシップ制度の拡充策や、同制度を通じて得た学生情報を採用活動に利用するための条件も検討」に関しては、おそらく大きな変更は起こりえないはずです。

 

採用条件や経験などをポイント換算したり数値化することは、そのことでその活動をする学生が増えるといった多様性とはまったく正反対の学生行動が想定され本末転倒の結果を招きかねません。

 

「資格取得やインターンシップは就職活動に有利ですか」といった話が、「●●を経験することは」に置き換わるだけだといえます。

 

学生が経験する内容は、社会人からみるとそれほど大きな経験ではありませんので結果として採用条件に大きな変化は起こらないと考えられます。

 

就職率は変化するのか?

採用条件を議論するよりも通年採用で最も議論しなければならない論点は、採用時期が多様化することで年間を通じた就職率・就職状況が悪化するのではないかということです。

 

新卒一括採用の最大のメリットは「就職率が高い」というところにあります。

 

社会にあって「なにも経験していない若者」を大量に採用するシステムであり、例年就職希望の大学生の95%以上が就職しています。

厚生労働省・文部科学省「平成29年度大学等卒業者の就職状況調査(平成30年4月1日現在)」によると2018年3月卒業の大学生の就職率は98.0%となります。

 

この新卒一括採用のシステムが機能しているため、日本では諸外国と比較して若年者の失業率が少ないといわれています。

このシステムが崩れることで実質的に就職率が低下し、多くの若年失業者を生み出してしまう可能性が考えられます。

経験者を優遇するシステムは未経験者にとって極めて厳しいシステムとなるためです。

 

今回の産学協議会の提言は、新卒一括採用は「未経験者優遇(限定)」であった採用のあり方を「経験者優遇」へと転換をはかる大きなチャレンジといえます。

 

提言には「現行の採用形態から多様な採用形態へ混乱なく移行するための方策を検討する。」という表現がありますので、どのような方策が示されるかによって就職活動・採用活動は大きな転機を迎えることになります。

 

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