キングダムに学ぶ「トランプ大統領の戦略」日米安保条約破棄の真意とは!?
こんにちは、さんちゃんです。
久方ぶりのマンガ「キングダム」に学ぶシリーズです。
しかも今回は、トランプ大統領とあの人物の共通点から戦略を読み解くという無謀な挑戦でもありますので、気楽な気持ちで最後までお付き合いいただけるとうれしいです。
もくじ
トランプ米大統領の戦略とは? 日米安保条約の廃止に言及!?
令和に入り、トランプ米大統領の発言は過激さを増すばかりです。
これまで、中国、メキシコ、イランなどに対して制裁をおこなう発言を繰り返しています。
メキシコに対しては関税強化を発動直前で取り下げましたし、イランに対してもレーダー基地への攻撃命令を発したのちこちらも土壇場で撤回したと伝えられています。
このように制裁をちらつかせては取り下げるという駆け引きを多方面でおこなっているのがトランプ大統領です。
そして、日本に対しても「日米安全保障条約」を破棄する可能性について話しているというニュース速報が伝わってきました。
トランプ米大統領が最近、日本との安全保障条約を破棄する可能性についての考えを側近に漏らしていたことが分かった。事情に詳しい関係者3人が明らかにした。トランプ大統領は日米安保条約が米国にとって不公平だと考えている。
関係者によれば、トランプ氏は同条約について、日本が攻撃されれば米国が援助することを約束しているが、米国が攻撃された場合に日本の自衛隊が支援することは義務付けられていないことから、あまりにも一方的だと感じている。旧条約から数えて60年余り前に調印された安保条約は、第二次世界大戦後の日米同盟の基盤となっている。
大統領は条約破棄に向けて実際に措置を取ったわけではなく、政権当局者らもそのような動きは極めてありそうもないことだと話している。トランプ氏の個人的な会話の内容だとして関係者らはいずれも匿名を条件に語った。出所)「トランプ大統領、日米安保破棄の考え側近に漏らしていた-関係者」Bloomberg(2019年6月24日配信)
関係者は匿名で、真意のほどは定かではありません。
がしかし、ブルームバーグを通じてこのような発言が発信されたという事実は、トランプ大統領になんらかの意図が働いていることは明白です。
中国、メキシコ、イランのときもそうですが、突然ツイッターなどで制裁発言をおこない、言われた側の出方をみてから正式に対応するというのがトランプ大統領の常套手段です。
突然に強引な要求をふっかけておいて、混乱するのか、反発するのか、妥協するのか、相手がどのように反応するかによって態度を明確にしているわけです。
超一流のビジネスパーソンであるトランプ大統領ならではの戦略といえます。
トランプ大統領は、キングダムの呂不韋にそっくり!?
そんなことを考えていると、歴史上の人物でトランプ大統領にそっくりな人をみつけました。
マンガ『キングダム』に登場する秦国宰相の呂不韋(りょふい)です。
商人として頭角をあらわした呂不韋は、国王(のちの秦の始皇帝・嬴政(えいせい))が少年であることをいいことに、政治家としてNo1.の地位である丞相として憲政を自分の思いのままに支配します。
最終的には画策したクーデターに失敗して失脚しますが、その豪放磊落で親分肌な性格やビジネス・金銭についての豊富な知識をみると、まさに現代のトランプ大統領とそっくりといえるのではないでしょうか。
呂不韋の交渉術~権力を誇示!強気にふっかけて相手の出方をうかがう!~
呂不韋はキングダム前半に登場する最重要人物のひとりで秦国丞相として君臨しています。
2019年6月現在、単行本54巻まで発売されていますが、呂不韋が姿を消す40巻まで事あるごとに主人公の信(後の秦国将軍)や嬴政の前に立ちはだかる強大の勢力として描かれています。
嬴政や信は、他国との戦いとともに国内の第一勢力である呂不韋陣営の動きに常に振り回されています。
その影響力は、国王である嬴政をもしのぐほどで、呂不韋が裏で糸を引いていると思われる国王襲撃事件などに対しても嬴政は呂不韋を裁くことができないほどに両者に力の差があります。
呂不韋の交渉術が最もよく発揮されている事例は、趙国宰相の李牧(りぼく)を秦国に呼び寄せておこなう交渉です(単行本17巻)。
呂不韋は、交渉のテーブルを設定するためにかなり強引な手段を使います。
趙国の国王の寵愛を受けている人物が、自身が商人時代に面識のある人物であるとわかると旧交を深めようと呼び出しそのまま拉致してしまいます。
そして、「返してほしければ宰相自ら秦国まで来い」と趙国に伝えます。
そもそも秦国と趙国は一年前まで大きな戦いをしており敵国同士です。秦国にとっては大将軍である王騎将軍が殺されるなど両国ともにたくさんの死傷者をだした戦いとして記憶されています。
そのような状況下で、宰相に引き取りに来いと伝えているわけです。
趙国宰相は、こちらも超重要人物の李牧(りぼく)です。
戦いにおいての武力、戦略を立てる軍才、内政や外交などあらゆる場面で超一流の仕事をする人物です。
とはいえ、そもそも戦争中の敵国に行くわけですから命がけの行為となります。
臆することなく秦国に堂々と乗り込む李牧もまた並外れた人物として表現されています。
施政者として呂不韋が嬴政の越えなければならない人物であるとすれば、李牧は武人として信が越えなければならない人物といえます。
いざ、両者が対面したとき、周囲がはらはらするような緊張感のなかでキングダムの二大巨頭による生死をも左右する交渉が繰り広げられます。
李牧:趙国宰相李牧です
呂不韋:秦国丞相呂不韋である …いやはやしかし少々強引な手を使ってしまったが…ついに会えましたな李牧宰相
李牧:お目にかかれてうれしく思います呂不韋丞相※互いの笑い声と世間話がつづく※
※李牧は自分が小心者と卑下し、呂不韋は王騎将軍をはめ殺した人物が小心者とはと皮肉をいう それに対しても李牧は小さいからこそ策を必死で練ったと答える※呂不韋:はは…ではそろそろ本題に入ろうか やはり李牧殿にはここで死んでもらう ただの策士なら殺すに足らんと思っておったがもちろん貴殿はそうではない 貴殿が自分で小心者というのはかまわぬがそれは人の大きさをあらわすものではない 強欲でないのは確かだろう 欲の塊のような儂にはふつうそういう人間はちっぽけに見えるのだがなぜか貴殿はむしろ恐ろしく強大に映る だからここで殺す
出所)『キングダム』第17巻
いきなり「死んでもらう」からスタートします。
両陣営に緊張感が走ったのはいうまでもありません。
そして、呂不韋は李牧に対して、このピンチをどのようにきりに抜けるのかと問いかけます。
李牧の答えは、中国全体の大きな地図を広げて各国の情勢を語ります。
最後に、趙国と秦国が同盟を結ぶことを提案します。
中華では秦国、趙国を含む7国が覇を争っており、いずれかの国で戦いが発生すると他の国は虎視眈々と漁夫の利を得まいと準備をすることになります。
あまりに戦いが長期化すると軍隊が出陣していてもぬけの殻となった国を別の国が攻めるということも考えなければなりません。
7国が互いに牽制し合っている微妙なバランスで成り立っていることから中華統一もちろん領土を広げることも極めて困難な状況です。
そういう状況だからこそ、秦国と趙国が同盟を組んで他の国に攻め入るときなどに自国に攻め入らない、他国に協力しない、などの密約を結ぶわけです。
この秦趙同盟は、秦国にしても願ったりかなったりの提案です。
しかし、少し前まで戦争をしていた両国において、笑って手を結ぶことに抵抗があります。
特に王騎将軍の元部下たちにとっては将軍の仇となる人物からの提案ですから素直に受け入れることができず場は騒然となります。
そこで呂不韋は一喝したうえでさらに交渉をすすめます。
願ったりかなったりの秦趙同盟の提案について呂不韋の回答は極めて高度な交渉術を発揮します。
※李牧による秦趙同盟の提案について※
呂不韋:断る
※冷静に秦趙同盟のメリットを理解している人たちが断ったことに驚きます※
呂不韋:同盟を持って来た李牧殿はさすがとして言いようがない 今この時期に趙と盟を結ぶことは国に大きな利益を生む しかし これを持って来た李牧という人間 やはり間違いなくそなたは趙国の唯一無二の宝だ その李牧殿の首と今回の同盟の話の値踏みをしてみたところ―― ほんのわずかだがそなたの首の方が値が張ると儂は見た だが本当にごくわずかだ それ故に交渉の余地はある
※周囲は「交渉」という言葉にどのような内容なのか不思議がっている※
呂不韋:では李牧殿 城でも一つおまけしてくれぬか
※周囲は「城」にどのような意図があるのか不思議がっている※
李牧:…… ――と申されますと 城を一つただで明け渡せと…
呂不韋:そうじゃのォ 昔 商いでよく足を運んだ地で気に入った場所があったのォ お――たしか”韓皋”(かんこう)だったかな?
※周囲は一様に驚く 「韓皋」は国境の軍事的要所にあり趙国が大金をかけて築城した城であり重要度が極めて高い ただでよこせという呂不韋のふっかけぶりに驚いている様子※出所)同上
呂不韋は相手からの最良の提案に対して「断る」とはっきり拒否の態度を示しています。
そのうえで交渉の余地があるとして追加でさらなる譲歩を引き出そうとします。
その譲歩が韓皋という重要な立地にある巨大な城です。
もしこの城を力づくで奪おうとすると人命、金銭、時間、など多くの犠牲がでることは間違いありません。
ふっかけられた李牧は、即断をさけ国王に相談が必要と返答しますが呂不韋は李牧の権限で大丈夫であることを見抜きます。
また、別の城を明け渡そうと提案しようとすると韓皋でなければ城を10個よこせと迫ります。
そして李牧に決断を迫ります。
呂不韋:はっは もうよい 化かしあいはここまでじゃ ものは卓上に出そろった もはやあるのは単純な二択 韓皋を明け渡して秦趙同盟をなすか この場で李牧殿とそのお仲間全員を処刑するか 二つに一つだ さァ李牧宰相 返答いかに
李牧:残念ながら……値切れる気が全くしません 韓皋をお渡しします
呂不韋:よし 秦趙同盟成立じゃ出所)同上
二者択一に単純化して決断を迫る方法、タイミング、そもそも城と命という結論ありきの二択、そのままでも同盟は成立していたにも関わらずさらなる追加の譲歩を引き出す交渉術は見事というほかありません。
秦国の重臣たちも呂不韋の交渉術に感嘆としています。
これが一介の商人から国家の宰相まで上り詰めた呂不韋の交渉術です。
トランプ大統領と呂不韋による交渉術の共通点!
トランプ大統領と秦国宰相呂不韋の交渉術には非常に多くの共通点があります。
第1に、突然一方的に要求を通達する
第2に、強気に迫る
第3に、相手の反応をみて最終決断をおこなう
このように自分自身の側に必ず主導権を握りながら交渉をおこなっています。
そして最終的には自分の要求をとおすわけです。
もちろん紀元前の春秋戦国時代と現代とでは時代が違いますので両者がまったく同じというわけではありませんが、交渉術のスタイルは極めて類似したものがあるといっても差し支えないと思われます。
トランプ大統領のツイッターによって他国が右往左往する様を見てきましたが、今度は日本に対して日米安全保障条約の破棄を示唆するような話が伝わってきたわけです。
すでに先日のトランプ大統領訪日時の首脳会談で日本側はかなり譲歩した内容で妥結されているのではないかという憶測が飛んでいます。
そこでの内容については参議院選挙終了後に発表するとのことで選挙前に発表すると選挙にマイナスになるような内容ではないかと考えられています。
今回、両国の関係に迫る日米安保条約破棄を示唆するという発言ですから、このことに日本側がどのように反応するかによって日米の関係が変化していくかもしれません。