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紳士服メーカーの「スーツ離れ」とビジネスパーソンの「副業解禁」はまったく同じメカニズム。生き残りをかけた分水嶺となる

2018/12/20
 
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こんにちは、さんちゃんです。

 

2018年も残すところあと1か月。気象庁の発表だと暖冬のようですが、この1週間くらいでめっきり寒くなってきましたね。寒いのは苦手なんですが、一方で冬らしい雪化粧で風情を楽しみたいという気持ちもあります。

 

さて、本日は、紳士服メーカーのスーツ離れと、ビジネスパーソンの副業解禁について書いていきます。結論を言うと、どちらも同じメカニズムで、ひとつの収入源に依存していると時代の流れに取り残されるというものです。同時に、大変な時代になったということもできます。

 

紳士用スーツ市場はバブル時代に記録した8000億円のピークから2000億円台にまで落ちており、労働人口の減少から考えても回復の見込みは全くない。大手紳士服メーカーの「スーツ離れ」は、もはや避けられない流れとなりつつある。

出所)「紳士服メーカーの「スーツ離れ」が止まらない皮肉な事情」ダイヤモンドオンライン11/30配信

 

近年の流れをみても、「クールビズ」が定着し、夏場はノーネクタイ、ノージャケットという人が多くなりました(そういえば、半袖スーツの省エネルックというものもありました。時の総理が着用しての囲み取材は衝撃的でしたが、残念ながら定着しませんでした。ある意味、先見の明があったといえるかもしれません)。

 

今のAOKI HDを支えているのは、実はマンガ喫茶とネットカフェの複合カフェ施設である。複合カフェはここ数年で淘汰が進み、AOKI HD子会社のヴァリックが運営する「快活CLUB」が業界最大手となった。今期はスーツを含むファッション事業が15.8億円の赤字であるのに対し、複合カフェ事業は17.5億円の黒字で、ちょうど紳士用スーツ低迷の穴を埋めている状態だ。出所)同上

 

AOKIホールディングスのホームページをみると、

創業から半世紀以上を経た現在では、時代の移り変わりのなかで人々の価値観やニーズは、ますます多様化しています。こうした社会の変化に対応するためAOKIグループは、人生のさまざまな場面でお役に立ちたいという想いから「生命美の創造」というコンセプトを打ち立て、創業事業であるファッションに加え、ブライダル、エンターテイメントの3分野で事業を拡大しています。

とあり、必ずしもスーツ(ファッション分野)にこだわっていないようです。

はるやまホールディングスをみても、グループ経営方針に「「お客様第一主義」を経営理念に、地域に必要とされるインフラ企業を目指します。」とあり、IT化やM&Aを通じた新たな事業開発、スーツ事業にとどまらない拡大成長路線を目指すといった社長メッセージがあります。

 

これらの経営理念や社長メッセージからは、事業領域(ドメイン)や想定顧客(ペルソナ)がいかに重要であるかが読み取れます。少なくとも、社会人の男性にスーツを販売する、といった単純な事業や顧客を想定していると(半世紀前であればそれでもよかったのかもしれませんが)、今や時代の波に取り残されてしまうという危機感となって表れています。

 

実は、ビジネスパーソン個人についても、まったく同じ時代の波がすぐそこまでやってきています。

 

副業解禁で収入は上がるのか、下がるのか?

厚生労働省は、働き方改革実行計画を踏まえて、副業・兼業の普及促進を図るため、2018年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公表しました。これは、国・政府が、ひとつの会社に専念してそこからの収入で生活する働き方からの脱却を促しているといえます。

これまで日本的経営の三種の神器と言われてきた終身雇用、年功序列型賃金、企業別組合も、現在では強固に維持されているのは一部の大企業のみだと思います。多くの中小企業で働く人にとっては転職はそれほど珍しいものではありませんし、非正規雇用で賃金上昇が見込めない人を見たことがないという人もいないでしょう。組合組織率も低下の一途をたどっています。

このようななかで、国・政府は、働く個人に一社で完結しない働き方を提案しています。

 

国・政府の目指すべき理想は、現在の収入100%に、副業・兼業20~40%程度の収入アップに加え、社外に出ることでスキルが磨かれ人脈が増えることになり、そうすることで個人の自律型キャリア形成にもつながる。会社にとっても「日本型エンプロイアビリティ」(雇用されうる力)が高まった従業員を雇用し続けることができるといった考え方に基づいているといえると思います。

 

しかし、おそらく、現実的には、現在の収入を100とすると70~80程度に目減りすることが想定されます。それは、副業・兼業の普及促進が、企業に対して、自社ひとつで従業員の生活を丸抱えしなくてもよいというお墨つきを発行したのと同じ意味合いを持っているからです。つまり企業に対して、このままだと維持向上が難しい年功序列型の賃金体系の見直しにとどまらず、従業員の生活給としての意味合いが強かった賃金体系についても放棄することを事実上可能としたわけです。

企業側からみると、自社70%(現在の100から30%賃金ダウン)、他社で副業・兼業30%が確保できれば収入面はプラスマイナスゼロ、それであっても、同時にスキル向上や人脈形成につながる分だけ個人にとってはプラスになるという考え方に基づいた賃金体系の見直しを検討するのではないでしょうか。

 

もちろん、今の段階でどうなるかはまったくわかりません。

それでも、思い起こされるのが、1995年の「日経連報告書」とその後の雇用の在り方の変化です。日経連報告書とは、「新時代の日経連報告書「新時代の『日本的経営』-挑戦すべき方向とその具体策」として日本経営者団体連盟(当時。現在の日本経団連)が1995年5月に発表した報告書で、そこで提言された雇用ポートフォリオがいわゆるフルタイム正社員の減少、非正規雇用である派遣労働者等の拡大に向けたお墨つきを企業に与えるきっかけになったといわれています。

 

今回の副業・兼業の普及促進の流れが、二つ以上の仕事をしていることがステータスや自律型キャリアにつながるのではなく、二つ以上の仕事をしなければ生活ができない、といった労働者をたくさん生み出すような社会にはなってほしくないと切に願っています。

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