就業者が1250万人も減少するかも!? 論点をずらして家族のあり方を見直す契機となれば
こんにちは、さんちゃんです。
就業者が1000万人以上も少なくなる衝撃!?
厚生労働省は15日、労働力推計を発表しました。
【参考】厚生労働省「雇用政策研究会」の第8回議事次第、配布資料より
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000204414_00001.html
発表によると、2040年まで経済のゼロ成長が続くと、2017年と比較して就業者が1250万人減少して5245万人になると試算しています。
特に、働き盛りの30~59歳で落ち込みが激しく、女性や高齢者が活躍しなければ大変なことになると結論づけています。あわせてAI(人工知能)による生産性向上が不可欠とされています。
さて、このような議論の一般的な流れはつぎのとおりです。
①人口が減少している
②当然、就業者も減少する≒労働力が不足する
③このままだと経済の停滞という危機が訪れる
④そのため、これまで就業していなかった層(女性や高齢者など)の労働参加を高める必要がある
⑤あわせてAIなど技術革新による生産性向上が求められる
②から④は、労働の担い手が少なくなるからなんとかせい、という話です。
ここでくわしくは書きませんが、外国人労働者の雇用や障がい者雇用の促進など同じ文脈で議論されることが少なくありません。
1000万人以上も就業者が減少するといった衝撃的な数字が並んでいますが、数年ごとに繰り返されている議論と言えなくもないです。論旨の組み立ても結論もだいたい同じになるところもデジャヴ感があります。
そこで、このブログでは就業者の減少という働き方の視点から少し論点をずらして生活の視点で考察していきます。
ずばり家族のあり方の再検討です。
遠回りのように思えて人口減少に歯止めをかける本質的な解決策につながるのではないかとも考えられます。
家族のあり方を見直してみよう:過去から現在をふり返る
ここで家族とは、大家族とか、核家族とか、一人暮らしとか、生活の拠点という程度の意味合いです。
世帯と言い換えてもほとんど同じです。
ブログですので、厳密な数字や学術的な用語にはこだわらずに書いていきます。
そもそも家族というと大きく3種類の活動によって営まれています。
1.経済活動・・・家族が生活する資金を稼ぐための活動
2.家事活動・・・家族が生活する拠点を整える活動
3.育児活動・・・子どもを育てる活動
そして、この3種類の活動の担い手について、家族形態と時系列とを整理していくと次のようになります。
大家族の時代:1940~1950年代
「もはや戦後ではない」(1956年『経済白書』の序文)を合言葉にがむしゃらに戦後復興に勤しんだ時代です。
イメージとしての家族構成は、お父さん、お母さん、息子、息子嫁、子どもたち、といった二世帯、三世帯の大家族です。「サザエさん」をイメージするとわかりやすいかもしれません。
サザエさんの場合は、娘、娘婿となります。適宜、読み替えてイメージしてください。
大家族の場合、3種の活動の担い手を整理すると、
経済活動・・・「お父さん+息子」の2人体制
家事活動・・・「お母さん+息子嫁」の2人体制
育児活動・・・「お母さん+息子嫁」の2人体制
となります。
経済活動は父と息子(婿)の2人体制で稼いでいます。
サザエさんのケースを当てはめると、波平さんとマスオさんの2人が稼ぎ手となります。
家事活動と育児活動については、母と娘(嫁)とで分担して実施することになります。
サザエさんのケースだと、フネさんが家事をサザエさんが育児を主に担当しています。
フネさんの子どもは、サザエさん、カツオくん、ワカメちゃんの3人ですが、長女のサザエさんが自分の子どもであるタラちゃんと一緒に弟(カツオ)や妹(ワカメ)の世話をしているシーンが頻繁に登場します。
同時にカツオやワカメがタラちゃんの世話をしてくれるシーンもあります。
つまり、家事活動と育児活動は母と娘(嫁)との2人が中心となっておこないます。
カツオが悪さをしたときなど、父親である波平さんが登場して「バッカもーん」とカミナリを落とすシーンがありますが、常日頃から育児を担うわけではないですが必要なときに父親がでてくることになります。
核家族の時代:1960~1980年代
1960年代に入ると核家族化が急速に進み、1975年には家族のスタイルのうち64%を占めることになります。
第一次産業から第二次産業へ、地方から都市へ、人口流入が相次ぎ、サラリーマンと専業主婦、子どもが2人という標準家族のイメージが定着した時代です。
そのため、大家族の時代とは異なり、3種の活動の担い手が減少し一人当たりの負担が増大します。
経済活動・・・夫
家事活動・・・妻
育児活動・・・妻
シンプルな構成ですが、大家族のときはいずれも2人体制で対応していた活動がそれぞれ1人でおこなう必要があります。しかも、妻は家事と育児のふたつの活動を原則ひとりでおこなわなければなりません。
イメージしやすいようにサザエさんの一家をふたつの家族に分けて考えます。
【波平さん・フネさん一家】
経済活動・・・波平さん
家事活動・・・フネさん
育児活動・・・フネさん(カツオとワカメの2人が対象)
【マスオさん・サザエさん一家】
経済活動・・・マスオさん
家事活動・・・サザエさん
育児活動・・・サザエさん(タラオくんが対象)
一目みてわかるように、フネさんの負担が非常に大きくなります。これまでサザエさんがいましたので家事の一部と育児の大部分を任せることができました。しかし、核家族化が進展したことによりフネさんは家事と育児の両方を原則ひとりで担うことになります。
また、大きな持ち家に住んでいる波平さん・フネさん一家はいいのですが、マスオさん・サザエさん一家は新しく住居を探す必要があります。
新婚時代は郊外の団地に住み、子どもの成長にあわせて一軒家に移り住むことが理想の家族像だった時代です。
マスオさん一人の収入で家族を養わなければいけませんので、大家族のときよりも生活は大変になると思います。
さらに、マスオさんひとりの収入で家計を支えられる場合はいいのですが、そうでない場合は、サザエさんは専業主婦からパートの仕事を探すことになります。すると、妻は、家事育児に加え経済活動をも担わないといけなくなります。
このように、大家族の時代にように経済活動、家事活動、育児活動を複数で担うことができなくなった結果、それぞれのプレイヤーが多忙を極めるようになります。なかでも女性(妻)の負担が非常に大きくなっていることがわかります。
また家族を養うことが一人前の男性と言われていた時代から考えると男性の威厳に直結する収入の減少も家族関係に少なくない影響を与えることになります。
このことだけが原因ではありませんが、結果的に、結婚観の変化、未婚率の上昇、一人世帯率の上昇につながっていると考えられます。
一人世帯の増加:1990年代以降
大家族から核家族化の流れをみてきましたが、それは家族を維持・継続する3種の活動(経済活動、家事活動、育児活動)の担い手が減少することと同じでもありました。
右肩上がりの経済成長が続いていればそれでも維持できたのでしょうが、安定成長時代になると収入の増加も難しくなります。結果的になんらかの活動を縮小、制限せざるを得なくなります。
わかりやすいのは、育児活動の縮小や消滅です。
子どもの数を3人から2人に、さらには1人にと産む人数を減らすことになります。
さらに、DINKs(Double Income No Kids、夫婦共働きで子どもなし)と言われるように、子どもはあえてつくらないという家族のスタイルも確立されました。
さらに、バブル崩壊後、2000年以降の低成長時代に入ると、結婚それ自体を避ける人たち(意図的に独身を好む層や低収入等を理由に結婚を諦めている層など実情は多様である)も増えており、一人世帯が増加しています。
一人世帯の場合、育児活動は不要となるが経済活動と家事活動のふたつの活動を一人で担う必要がでてきます。
なお、一人世帯には若者も少なくないですが、配偶者と死別等を経験した高齢者の一人世帯も年々増加しています。
家族のあり方を見直してみよう:現在から将来を考える
このように家族のあり方をみてくると、大家族→核家族→一人世帯へと家族形態が移行するにあわせて、経済活動、家事活動、育児活動の一人当たりの負担が増大していることがわかります。
そして、負担の縮小のために育児活動の縮小を図りを出産・子育てを諦める人が増えています。
さらに、育児がない(≒子どもがいない、いらない)のであればそもそも結婚をする必要性がイメージしづらくなっています。
最初に就業者の減少と対応策の一般的な議論の流れを示しました。
そこで示した、人口が減少している、働き手の中心となる男性労働者が少なくなる、だから女性や高齢者に働いてもらう、という議論の流れは一見するとよくできたストーリーです。
しかし、逆から読むと、女性や高齢者に働いてもらう必要がある、男性労働者は自分の収入だけで家族を養うことができない、男性も女性も高齢者(男女いずれも)も、それぞれがこれまで以上に多忙を極めるようになり、その結果ますます結婚から遠ざかり人口が減少する、というストーリーも考えておかなければなりません。
ちなみに、妊娠出産時には実家に帰ったという女性や、そういう女性を妻にもつ男性は少なくないでしょう。
さらに育児においても、子どもが熱を出したときなど実家が近所にあると預けることができて心強いという話もよく聞きます。もしかすると妊娠、出産、育児において家族(特に妻側の両親)の協力が得られるどうかは子どもの数にも影響しているかもしれません。
いずれにしても、子どもたちは将来の就業者となります。
昭和的価値観による大家族に戻せばいいという単純な話をするつもりはありませんが、就業者人口を増やすためには、就業者だけに目を向けるのではなく家族のあり方についても併せて考える必要があるのではないでしょうか。