幸楽苑がラーメン屋からスタジアムへ!? 楽天と提携してAI活用の体験型顧客戦略を展開
こんにちは、さんちゃんです。
もしかするとラーメン屋さんがスタジアムやテーマパークに変わるかもしれません。
以前ブログでも紹介した、正月休みを導入したラーメン・チェーン「幸楽苑ホールディングス」が、インターネットビジネスの雄である楽天と提携して新たなサービスを展開するようです(「幸楽苑が楽天と連携–AI活用で“外食”の顧客体験向上を目指す」CENT Japan(2019年1月28日配信))。
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もくじ
1月29日より幸楽苑全517店舗で楽天ポイントカードの提供開始
ひとつ目は、幸楽苑全517店舗で楽天の共通ポイントサービス「楽天ポイントカード」の提供です。
楽天ポイントを貯められることはもちろん、ポイントを利用しての食事も可能だということです。
明日、1月29日より全店舗で提供が開始されるようです。
ラーメンが好きな人、そして楽天市場をよく利用する人にとっては朗報です。
また、幸楽苑、楽天の両者にとっても、ラーメンチェーンを利用する人とネットショッピングを利用する人には重なり合う顧客層が少なくないため、相乗効果が期待できます。
AI搭載デジタルサイネージ「幸楽苑 UmaAIくじ(読み:うまいくじ)」の試験導入開始
ふたつ目は、AIを活用した新しい顧客戦略の展開です。
連携を決めた楽天の研究機関である楽天技術研究所が開発したAI搭載デジタルサイネージ「幸楽苑 UmaAIくじ(読み:うまいくじ)」を試験的に導入していくことが決定しました。
デジタルサイネージとは、ネットワーク化された看板・ディスプレイのことで、駅構内やショップなどの巨大スクリーン、液晶ディスプレイ、モニターなどを指します。
「幸楽苑 UmaAIくじ」は、一般的な店舗案内・メニュー紹介機能だけではなく、AI(人工知能)を活用して来店したお客さん一人ひとりの顔認証、年齢性別の認証データなどから、おすすめの商品をカスタマイズして案内したり、専用のクーポンを提供したりする機能が付加されるようです。
どこまで詳細なデータ分析をおこなうかについては記事からはわかりませんが、顔認証から判断する年齢性別に加えて、来店の日付(月初、中旬、月末)、時間帯(午前、午後、夕方、夜など)、曜日(日~土、祝日など)、天候(晴れ、曇り、雨など)、などの過去データをAIで活用することでかなりカスタマイズされた商品・サービスの提供ができるようになるのではないでしょうか。
記事によると、従来は注文数のみで顧客動向を分析していたとのことですから、ポイントカード機能とAI機能とを複合的に活用することで、また、来店人数や滞在時間なども分析可能であれば(当然、注文メニューや客単価は分析対象)、案内する座席の場所や回転率の向上にも役立てることができそうです。
このようなデータの蓄積がさらに進めばさらに詳しい分析が可能となり、ある種パズルのような感覚で最適解を見つけ出し在庫管理やお客さんの待ち時間を最小化することに活用できます。
幸楽苑ホールディングスの新井田昇・代表取締役社長はAIの具体的な活用はこれからとしていますので、今後の展開を楽しみにしたいと思います。
たかがラーメン、されどラーメン、
現代の国民食ともいえる食べ物ですから、その食事動向のデータ分析は、思いもよらないようなビッグビジネスにつながるかもしれません。
東北楽天ゴールデンイーグルスの2019年オフィシャルスポンサー契約の締結合意
幸楽苑の本社が福島県にあることや、同社社長の新井田氏が以前楽天で働いていた経験があることなどの縁もあり、東北楽天ゴールデンイーグルスの2019年オフィシャルスポンサー契約の締結合意に至ったようです。
記事の中で、新井田氏は「お店に来て楽しい、おいしいという体験を提供したい。幸楽苑にわざわざ足を運ぶ体験を楽天の力を借りて何かできないか」と考えて幸楽苑 UmaAIくじの提供につながったとしています。
そこには、ラーメン屋がラーメンを提供していたらそれで良いという時代ではなくなっており、「おいしい体験」ができる場所としての楽しさ・ワクワク感のような感覚を球団運営に定評のある楽天との連携で見出したいという意気込みが伝わってきます。
言い方を変えると、ラーメン=商品の提供だけの戦略ではなく、おいしい=体験を提供するといういわゆる「体験型マーケティング」(Experiential Marketing)の手法を取り入れ、より魅力的な店舗運営を展望しているといえます。
これまで外食産業では、個人店のこだわりや、チェーン店のブランド戦略や低価格戦略に注目が集まってきましたが、これからは、食を通じたなんらかの付加価値を提供していくことが大切になってきているわけです。
働き方改革に関連していち早く元日休業を公表した幸楽苑ホールディングスですから、商品開発とはまた異なる視点からのマーケティング・販売戦略を提供してくれることを期待しています。