サッカーアジアカップ2019決勝VARでのPK判定とサンバイオ・ショックから考える情報収集の偏り!
こんにちは、さんちゃんです。
VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)判定に思うサッカーらしさ・らしくなさ
サッカーのアジアカップ2019が全日程を終えました。
日本代表の結果はいかに?
日本代表は勝利すると史上最多5回目の優勝となることや、
日本代表チーム史上初「先発メンバー全員・海外組」(海外のクラブチームに所属)など注目された一戦でした。
試合結果は、
残念ながら1-3でカタールの勝利
日本代表は準優勝で幕を閉じました。
カタールの1点目のオーバーヘッド、2点目のロングシュートがめちゃくちゃ素晴らしかったため、カタールの勝利を素直に讃えたい気持ちです。
「サッカーダイジェストweb」では、選手、関係者、各国の反応などが紹介されていまいた。
【カタール戦|動画&記事一覧】解説:セルジオ越後、金田喜稔、松木安太郎、採点&寸評、プレー分析、各国メディアの評価、PHOTOギャラリーetc.
もちろんセルジオ越後さんは敗戦後のコラムにて安定の批判的ご意見でした。
なかでも気になったのが、後半38分におきたVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)判定についてです。
「なんてバカげたPKだ!」「決勝が壊れた」吉田麻也へのVAR判定に海外ファンから同情&批判の声が|アジア杯
試合をみていない人のために、簡単に紹介すると後半38分(残り時間)に、カタールのコーナーキックからヘディングで競り合った吉田麻也選手の左腕にボールがあたってしまったシーンです。
VARの結果、「ハンドリング」の反則をとられてペナルティキック(PK)を献上することになりました。
カタールは落ち着いてPKで決めて1-3、残り時間を考えると敗戦が確実となった瞬間です。
ルールの厳格化とサッカーらしさ・らしくなさ
サッカーはゴールキーパー以外のプレイヤーは手を使ってはいけないルールになっています。
しかし、手に当たった際には、故意であると反則がとられ、単純にぶつかってしまっただけの場合は反則にならないルールになっています。
とはいえ、故意か故意でないかを判断することは難しく、従来のサッカーではゲームの流れのなかでは手に当たっても見逃されることも少なくありませんでした。
有名なシーンで言うと、1986年メキシコワールドカップでのマラドーナ(アルゼンチン)による「神の手」ゴールがあります。
近年では動画撮影の技術進歩がすさまじく、ゴールが決まったのかどうか(ラインを越えたのかどうか)の判定や反則の有無など映像で見返すことができるようになった結果、VARが導入されるようになりました。
メリットは、ビデオ・アシスタント・レフェリーの名前の通り、審判の補助として客観的なデータから判定ができるというものです。
しかしながら、同時にデメリットとして試合が中断してしまうというものがあります。
ご存知の方には釈迦に説法ですが、サッカーほどルールが少なくてルーズなスポーツはありません。
このルーズさがサッカーのおもしろさであり、サッカーらしさをつくりあげているといえます。
試合時間もきっちり90分ではなく、試合の進行をみて「ロスタイム」が設定されますし、その時間も審判が決めます。
反則にしても、審判の笛が鳴るか鳴らないかによっては反則となるかならないかは審判の匙加減です。
悪質な反則をした場合には、イエローカードやレッドカードが出ますが、それも審判の印象次第のところがあります。
「中東の笛」と呼ばれるような、アラブ諸国で開催される大会などでアラブ諸国が有利になるような判定が続出するような現象もあったりします。
同時にプレイヤーの側も、審判を欺くような「反則を受けていないのに反則を受けたフリをする」行為が少なからずあります。
「マリーシア」(「ずるがしこさ」という意味のポルトガル語)と表現されるような、たとえば自分から倒れているのに相手の足が引っかかって倒れたふりをして反則をもらうような行為です。
さきほどのマラドーナによる「神の手」はまさにマリーシアの典型的な事例です。
(ちなみにマラドーナ本人は、試合後のインタビューで「マラドーナの頭と神の手がゴールを生んだ」と表現したところから神の手という表現が定着しました)
しかし、近年では、ブラジル代表・ネイマール選手の「ネイマール・ダイブ」や「ネイマール・チャレンジ」と呼ばれる一連の倒れる動きが批判的にとらえられるようになりました。
従来は、マリーシアに対してもある意味ではサッカーの一部である、(やった側の)技術がすごい、(やられた側が)気をつけるべきことと捉えられてきましたが、最近では、ルールに厳格になってきています(ネイマール・ダイブも技術というより批判的にとらえられました)。
競技が成熟しているわけですから当たり前といえば当たり前のことなのですが、古いサッカーファンとしてはあまり厳格に判定しなくてもいいのになざとさみしくなるときがあります。
そういう意味では、マラドーナが活躍した1980年代、90年代と2000年代以降のサッカーとでは、ゲームのつくり方が異なってきているのかもしれません。
吉田選手がPKを取られたVARへの意見
アジアカップの話題に話を戻しますと、吉田選手はハンドリングの反則を取られることになりました。
それに対する各国の反応をサッカーダイジェストwebの記事から紹介します。
結果的にハサンのシュートを吉田が手でブロックしたのは事実であり、日本では「致し方なし」と見る向きが強いが、海外のファンはどう感じたのだろうか。世界的ネットワーク『Fox Sports』アジア版が拾ったのはまさに彼らの声で、意外にも批判的な意見が殺到しているのだ。同メディアは「ファンは日本を殺す一撃となったVARを批判」と題し、SNS上に飛び交う同情的かつ懐疑的な見解を掲載している。ここでもいくつか紹介しよう。
「日本にとっては大きな失望だろう。だがより絶望的なのは、あのVARが試合を決定付けてしまったことだ。ヨシダがかわいそう。カタールは素晴らしかった。彼らの勝利は祝福したい」
「VARのなかでも最低レベルのジャッジだ。救いようのない主審だったじゃないか。サムライブルーは本当にツイてなかったね」
「あらためて教えてほしい。ハンドというファウルは、インテンショナル(故意)でなければファウルじゃないのでは? こうした判定が下されるたびに頭が混乱する。VARの登場によってその基準はさらに曖昧になってきた」
出所)「「なんてバカげたPKだ!」「決勝が壊れた」吉田麻也へのVAR判定に海外ファンから同情&批判の声が|アジア杯」サッカーダイジェストweb。2019年2月2日配信
要するに、
●日本では「致し方ない」という意見が多い
●海外では「同情」「懐疑的」意見が多い
ということである。
情報収集の「バイアス」(偏り)を知ることの大切さ
このことを、少しうがった視点から分析すると、
1.残念ながら負けてしまい落ち込んでいる
2.相手の方が上手だった、今日は仕方なかったと納得する材料がほしい
3.とはいえ敗者が自ら審判を批判できないが、そういう意見が周りから出てくると少しすっきりする
4.ということで批判的意見を集めてみた
5.これをみると、敗北のモヤモヤ感が少しだけ解消される
というストーリーがみえてきます。
サッカーダイジェストwebの記事は、嘘やねつ造ではないと思いますが、おそらく意図的かつ選択的に情報を収集して記事として提供しているわけです。今回のVAR判定について、賛否両論のうち、日本では「賛」の意見を、海外では「否」の意見を取り上げているわけです。
つまり記事が伝えたい意図やそのストーリー展開に合致する情報を選択的に集めて記事を作成しているということになります。
このことは「当然のこと」でサッカーダイジェストwebを非難したいわけではありません。
すべての情報を収集することは時間的にも費用的にも不可能ですし、一定の情報から記事をつくる必要があります。
当然に「自分の知りたい情報を知る」という情報収集におけるバイアス(偏り)が生じます。
記事をつくる側(=情報を提供する側)はプロですから、バイアスを理解したうえで記事をつくっています。
(記事を読んだ人がどのような気持ちになるかということろまで考えてつくっているはずです)
そのため、記事を読む側(=情報を受ける側)は、そういったバイアスがあることを理解したうえで記事を読む必要があります。
このことを忘れてしまうと、他人の意見に振り回されたり、最悪の場合には騙されたりすることになります。
サンバイオ・ショックと情報収集の偏り
1月31日にブログに書きましたが、サンバイオ株式会社の株価が連日のストップ安となっています。
すでに、ピーク時の50%を超える下落となっています(2月1日もストップ安。月曜日もどうなるか未知数な状況)。
【1/31のブログ】
漫画に学ぶ株式投資! アカギの強靭な精神力からサンバイオ・ショックを考える
なぜこのような事態になってしまったのか。
そこで指摘できるのが「情報収集のバイアス(偏り)」があったということです。
株価が上昇していた時期は、株主にとって「良い情報」「ポジティブな意見」のみが収集され共有されていました。
つまり株主として現在進行形で儲かっている株に対して、意図的・選択的に良い情報のみを求めていたわけです。
そのときは「悪い情報」「ネガティブな意見」に対しては、気にも留めず過小評価したりするなどしていました。
株価の下落がはじまったあとは、一転して「悪い情報」「ネガティブな意見」で埋め尽くされることになります。
バイオ・ベンチャーの難しさ(新薬の成功確率は極めて低い)、従業員数の少なさ(わずか8名しかいない)、株価急上昇による時価総額の大きさ(最高で6000億超。大企業並みの水準である)、など・・・。
今からふり返ると、熱狂ぶりが信じられないという人が大半でしょうが、「情報収集のバイアス」がかかっていると起こりえないことが起こってしまいます。
個人の場合でも、企業や行政の場合でも、国家の場合でも、冷静な判断力を失うと事態が思わぬ方向へと進んでいくことになります。
人間が感情の生き物である以上、情報収集のバイアスから逃れる術はありません。
そのため、バイアスが生じることを理解したうえで、物事を冷静に分析して判断することが求められています。