24時間営業をしないコンビニ、セイコーマートから考えるセブンとの違い! 直営かFCか!?
こんにちは、さんちゃんです。
北海道民ならおなじみ、言わずと知れたコンビニエンスストア「セイコーマート」の経営が注目を集めています。
セイコーマートの経営戦略
今年に入り、コンビニの24時間営業をめぐってセブンイレブンのフランチャイズ店のオーナーが24時間営業を取りやめたことでコンビニ本部とトラブルになったことはよく知られています。
4月に入り、世耕弘成経済産業大臣が異例の大手コンビニの代表者を集めた意見交換会を開催しコンビニ本部とオーナーの共存共栄のための自主的な取り組み、国民生活のインフラとしての持続的な成長に向けた行動計画の策定を要請したことは記憶に新しいです。
そのようななかで北海道シェアNo1.のコンビニである「セイコーマート」(以下セコマ)の経営が注目されています。
フランチャイズ(FC)加盟店の24時間営業を巡り、大手コンビニエンスストアのビジネスモデルが揺れる中、道内最大手「セイコーマート」の24時間営業店舗の割合はわずか22%と異彩を放つ。平成期に急成長したコンビニチェーンの定石と一線を画す姿は、持続性を重視する「もう一つのコンビニ運営の手法」として注目を集めている。
出所)「24時間営業わずか2割 セイコーマート流は持続性重視」北海道新聞2019年4月16日配信
セイコーマートの営業時間
セコマ店舗の営業時間は「最低16時間・年中無休」が基本。だが「立地に応じて最適な営業時間を選択している」(広報室)といい、16時間より営業が短い店舗もある。2018年からは元日休業店も増え、今年は全体の半分強に当たる約670店が休んだ。
出所)同上
24時間営業ではなく16時間が基本であり、2018年以降は元日に休業する店舗が全体の半数に上っています。
すでに引用したとおり、24時間営業の店舗はわずかに2割にとどまっています。
時短営業・休日を可能とするビジネスモデル
売り上げ機会を失うことに直結する休業を可能にしているのは、店舗の売り上げに多くを依存しないビジネスモデルだ。FC店が主流の全国大手コンビニの本部は、店舗売上高から仕入れを引いた「粗利益」から一定の割合を徴収する「チャージ」が主な収入源。一方セコマは、店舗への商品の輸送はグループ企業が担い、商品の54%を占める自社製品の多くをグループ工場で生産。「製造や物流で資金が流出せず、全体で利益が出ればいい」との考え方にたつ。
出所)同上
ビジネスモデルの特徴は、製造、物流、販売を外部委託しておらず、自社グループで対応しているところにあります。
そのため、販売のみで収益を計上するシステムではなく製造から販売までの全工程を通じて収益を確保するシステムとして機能しています。
後述するように、フランチャイズ店舗が少ないことと相まって、店舗と本部、そして店舗同士の協力体制が構築しやすい土壌があります。
直営店舗中心の経営による協力体制
また、問題となったFC加盟店が少なく、8割をグループ企業が運営する直営店比率の高さもセコマの特徴。同社も店舗展開を始めた1972年からしばらくはFCが主流だったが、代替わりで担い手が不在になるなど課題が生じ、93年からオーナーの引退に合わせた直営化を進めた。直営店の従業員採用はセコマグループが担当しており、人手不足の中で「売り上げが期待できない時間に店舗を開けることはない」という。
出所)同上
おそらく、大手コンビニの他社と比較した際に、最も際立った特徴は、フランチャイズ店舗の少なさといえます。
直営店舗を中心に運営しているために、店舗同士における利害関係のバッティングが起こりづらいことになります。
フランチャイズ店舗であれば、名目上それぞれの店舗が独立自営となりますので、1円でも多くの売上、利益を計上することがオーナーにとって至上命題であり、たとえ同じチェーンの別店舗であってもライバル店舗となります。
そのようななかでコンビニ本部がドミナント戦略をとると、周辺に競合他社をたくさん出店されることになります。しかも品揃えなど商品の質量で差別化がほぼ不可能なため、共倒れのリスクがあります。オーナー同士の利害が対立してしまい、ある意味では呉越同舟といった状況が起こってしまいます。
しかし、直営店舗であれば店舗間の商品、備品、さらには人材の供給も本部主導で実施することができます。
そのため人員不足の店舗への応援など柔軟な人材活用が可能となります。
セイコーマートと他の大手コンビニとの最も大きな違い
つまり、直営店舗を中心とした経営か、フランチャイズ店舗を中心とした経営か、というのがセコマと他の大手コンビニとの最も大きな違いとなります。
フランチャイズ店舗中心の経営であれば、フランチャイズ店舗同士が絶えず切磋琢磨し互いに売上や利益の向上にたゆまぬ努力を注ぐインセンティブが働きます。
つまり、一店舗一店舗が最適をつくす部分最適の集合体が全体最適となるという考え方に立脚しています。
一方で、直営店舗中心の経営は、全体最適を考えて適材適所の配置を同一チェーンの店舗間で実施するという考え方に立脚しています。お互いに本部の直営となる店舗同士ですのでそこまで競合関係になることはありません。
どちらが優れているかはケース・バイ・ケースであり、一概に正解をいうことはできません。
フランチャイズ店舗中心だと絶え間ない競争環境に晒されますので不断の努力や工夫が求められますし、直営店舗中心だとより全体主義的な経営となります。
セコマで直営店舗中心の経営が上手くいっている要因のひとつには、北海道という地域性もあるものと考えられます。
他のコンビニが同じような経営をしてうまくいくのかどうかは未知数ですが、フランチャイズ店舗中心の経営は黎明期から成長期において競争社会を生き抜くベスト・プラクティスであったとしても、成熟期においては過当競争に疲弊するリスクの方が高くなっているように感じます。
大手コンビニの時短実験も始まったばかりですし、それぞれのコンビニがどのような次の一手を選択するのか引き続き注目されています。