政府発表のAI(人工知能)運用7原則から読むAI社会の未来! 日本は世界標準となり得るか
こんにちは、さんちゃんです。
内閣府の有識者会議である「人間中心のAI社会原則検討会議」の素案が発表されました。
AI(人工知能)運用に関する7原則
毎日新聞によると次の7原則になります。
(1)人間中心の原則
AIは人々の自由拡大や多様な幸せのために使われる。
AIの提案は人が判断する。
(2)教育・リテラシーの原則
すべての人がAIを正しく理解し、便益を得られるよう教育の機会を平等に提供する。
(3)プライバシー確保の原則
個人情報を本人の望まない形で流通させたり、利用したりしない。
(4)安全性確保の原則
サイバー攻撃や情報流出で安心・安全が損なわれてはならない。
(5)公正競争確保の原則
特定の国や企業がデータを独占したり、AIによって富が一部に偏ったりしてはならない。
(6)公平性、説明責任、透明性の原則
AIの利用によって差別があってはならない。AIの動作について可能な限り説明責任を果たす。
(7)イノベーションの原則
人材や研究の国際化・多様化を進める。国境を超えてデータを相互利用できる仕組みを作る。
7つの原則の相互関係を整理するビジュアル化が必要になる
なんとなく、わかったようなわからないような。・・・といった感じでしょうか。
まず、(1)人間中心の原則は、大前提となる理念だと思います。
とはいえ、AIの自己学習機能が進歩すると、本当に人間がAIを制御できるのか不安になります。もう少し視点を変えると、AIを人間が制御する・できる・しなければならない、といった前提がそもそも本当に正しいのかということも併せて考えなければなりません。それを含めて、実はよくわかっていない部分ともいえます。
これまでも人類の発展のために開発された科学技術が、その使い方を間違えたり制御できなかったりすることで、人間社会のなかで保有や使用が禁止されてしまったものがあります。要は、使い方次第ということになるのですが、そのあたりはこの7原則に基づいて、より詳細な運用ルールの策定が必要となってくるでしょう。
(2)教育・リテラシーの原則は、ある意味では日本のお家芸といえるものです。識字率100%の初等教育の充実ぶりは良く知られています。
2020年から始まるプログラミング学習の必修化とも連動しながら、AIについても併せてしっかり学ぶことができれば、AIにおける教育・リテラシーの基盤が形作られるのではないでしょうか。それができれば、日本の国際競争力が高まっていくことが期待できます。
(3)プライバシー確保の原則、(4)安全性確保の原則は、それぞれ倫理基準、安全性を定めるためのガイドラインになってきます。
(5)公正競争確保の原則、(6)公平性、説明責任、透明性の原則は、特にAIを活用して収益を上げようとする企業を対象とした、その公正性や説明責任に関する事項を定めるものになってきます。
詳細な運用ルールがまだわからないのでなんともいえませんが、あまり企業活動を制限するような制度設計になってしまうと研究開発や技術革新にマイナスになってしまう事態にもなりかねません。そのあたりのバランスが大切になってくると思われます。
(7)イノベーションの原則は、21世紀の社会において避けては通れない多国間での協働・競争のなかで、日本の立ち位置をどのように確立していくかに関わる原則といえます。
これら7原則の相互の位置関係について、まだよくわからないところがあります。
ざっくりというと、(1)が理念、(2)が全体の底上げや成長につなげる教育システムとなります。また、(3)(4)がリスク体制の構築、(5)(6)が商業利用の可能性、(7)が国際競争のなかでの立ち位置の確立、といったところでしょうか。
おそらく、そう遠くない時期に7原則の全体像が可視化できるような図表が発表されると思います。その全体像のイメージ図が広く国民に受け入れられるか否かで、AIの領域で日本の国際競争力が高まるのかどうか決まってくるといっても言い過ぎではないかもしれません。
ぜひ、AIの領域で世界を引っ張っていくような立ち位置を確立させて、研究開発・技術革新が進められることを期待してやみません。そのためには、「デファクトスタンダード」(事実上の業界標準・世界基準となるもの)となるような独自のガイドラインを世界に先駆けて構築することが大切になります。
ルールは守るものではなく創るもの~AIの領域で日本はデファクトスタンダードとなり得るか~
現在、世界の各国では、AIの活用についての運用ルールづくりに関する主導権争いが繰り広げられています。そこでの競争を制したものが、いわゆるデファクトスタンダード(事実上の業界標準・世界基準となるもの)を構築した国家や組織としてAI活用の領域で競争力を有し、世界をリードすることができるようになります。
アメリカでは自由競争の原理にもとづいた企業主導による運用ルールの作成が、EUでは、地域社会全体のなかで規制や制御をどうするかという視点に重きを置いたガイドラインの作成が始まっています。
日本は日本で、独自にしっかりとした原則や運用ルールを構築していく必要があります。間違っても欧米で決めたルールに追従するような真似だけはしてはいけません。
「ルール」は守るものではなく、創るべきものだからです。
どの領域においても言えることですが、こと科学技術や社会システムの領域においては、その作り手となることが競争力を確保する観点から最も重要となってきます。出来合いのシステムに乗っかっているだけでは競争力は削がれ、そこから大きな収益を得ることはできません。2位ではダメなんですね。
たとえばスポーツを例にとればわかりやすいかもしれません。これまで柔道やスキージャンプなど日本が強かった種目において欧米主導によるルール変更がおこなわれた結果、その後メダルを逃す事態になるといったことも少なくありませんでした。そこにはプレイヤーの努力の問題ではなく、ルール構築の問題が大きく影響していたわけです。
与えられたルールのもとで一生懸命頑張ることは美徳ではありますが、やはり国際社会と戦う以上は、自らがルールを創る側に立つことが大切になってきます。そういった視点から原則や運用ルールのガイドラインを作成してほしいと願っています。