漫画「キングダム」に学ぶ経営学! プロジェクトマネジメントの神髄(3)
こんにちは、さんちゃんです。
本日は、漫画「キングダム」に学ぶ経営学!プロジェクトマネジメントの神髄(3)をお送りします。
これまで、漫画「キングダム」に学ぶシリーズとして、「法律学」、「経済学」について独自の視点で紹介してきました。
第3弾「経営学」では、”山界の死王”楊端和を取り上げました。ひとつひとつがあまりにも濃密なエピソードのため、(1)から(3)の3部作として紹介しています。
過去記事とあわせてごらんください。
漫画「キングダム」に学ぶ経済学! 貨幣制度と資本主義の本質に迫る
漫画「キングダム」に学ぶ経営学! プロジェクトマネジメントの神髄(1)
漫画「キングダム」に学ぶ経営学! プロジェクトマネジメントの神髄(2)
あらためて概要を振り返ると、
今回の主役:「山民族の女王」楊端和(ようたんわ)
キングダム:
秦の始皇帝となる嬴政(えいせい)の若かりし頃のエピソードを描いた原泰久さんの大ヒット漫画(2018年12月現在、52巻発行、以下続刊)
キングダムは、チームマネジメントや、部署や組織を越えた”プロジェクトマネジメント”を担当されているビジネスパーソンにとって学ぶところが多い
テーマ:
楊端和のリーダーシップ、プロジェクトマネジメントに学ぶ
エピソード:
1.「列尾」城攻略~楊端和による城攻めの極意(47巻)…12/14公開
2.「遼陽」攻防戦その1~兵糧庫焼討におけるピンチの際の会議運営(51巻)…12/15公開
3.「遼陽」攻防戦その2~絶体絶命のピンチの際の指揮と士気(52巻)…本日公開
となります。
それでは経営学編の三回目をはじめていきましょう。
3.「遼陽」攻防戦その2~絶体絶命のピンチの際の指揮と士気(52巻)
すでに紹介した楊端和のエピソードから、
①プロジェクトの全体像を冷静に俯瞰する、
②大きな物事でも単純化して順序だてて説明する、
③リーダー自身が強いメッセージを発信する、
④部下に自分自身で決断させるように自然と仕向ける、
といった言動や行動が重要なポイントであることをお伝えしました。
遼陽での戦いのなかで、敵国趙の作戦にまんまと嵌ってしまい挟み撃ちにあいます。自軍の兵士たちが戦の勝敗どころか命までも諦めかけるような状況化における楊端和の言動と行動が、本日取り上げるエピソードとなります。
生きていれば誰でも仕事や生活でピンチの局面を迎えることがあると思います。絶体絶命のピンチをどう切り抜けるか、楊端和のエピソードから学ぶことにしましょう。
ポイント1.挟み撃ち!~危機から脱出する方法と考え方~
昨日紹介したエピソードで、楊端和は会議で作戦を伝えていました。
作戦は、犬戎王の3兄弟を倒すというもので、3兄弟の軍それぞれに対して楊端和軍も3つに分けて戦うというものです。
楊端和軍と犬戎軍との対峙は、
(1)バジオウ率いる楊端和直下の軍隊・・・長兄ゴバの軍隊
(2)フィゴ族・・・三兄トアクの軍隊
(3)壁軍(+メラ族)・・・次兄ブネンの軍隊
です。
そして、「どれだけ血を流すことになろうとも犬戎3兄弟を倒す」と檄を飛ばしていました。
楊端和は、バジオウ軍がゴバ軍を真正面から攻撃させつつ、自身は別動隊としてゴバ軍の背後に回り挟み撃ちにする作戦でした。
戦いが始まると、楊端和軍は見事にゴバ軍の裏をとり、バジオウとの挟み撃ちの構図が完成しました。
これで勝勢かと思った矢先、想定していなかった「犬戎族の王ロゾ」の軍隊が趙国・舜水樹の軍隊とともに背後から現れることになります。一転、今度は楊端和軍が前方のゴバ軍と後方のロゾ軍に挟み撃ちとなってしまいます。当然左右から逃げられないように趙国・舜水樹の指揮のもと公孫龍(こうそんりゅう)の軍隊が左右を囲んでいます。
バジオウ軍兵士たち:「…何だ!?端和様達の奥に敵の大軍が現れたぞ!?」「まずいぞ」「城から現れた軍とゴバ軍の間に端和様達は挟まれる形にっ…」「まさか狙ってなのか…しかも城から出てきたのは犬戎王ロゾの本軍だ――!!」「後ろを取られたぞ」
舜水樹:「お前達を絶望の淵に追いやるのは犬戎王の軍だけではない 忘れてはおるまいな 趙軍を!」
楊端和軍の兵士:「何だこの音は…」
公孫龍:「配置につけ」
楊端和の兵士たち:「奴らも城に隠れていたのか」「左右の道をふさがれたぞ」「来るぞ」「どうする」「とにかく端和様を守れ」「端和様は我らの中心に」「端和様!」
楊端和:「無念だが今は犬戎王まで刃が届かぬ 全軍脱出を図るぞ トッヂ・フゥヂは両脇を固めろ ラマウジは私の後ろにつけ」
※犬戎軍と趙が一斉に襲い掛かってきます。
楊端和軍の兵士たち:「ひるむな!」「脱出口を作れっ」
楊端和」「敵翼に走るな!全員私について来い」
前方「ゴバ軍」、後方「ロゾ軍」、左右「趙国軍」に囲まれてしまい、脱出を図ります。
楊端和軍の兵士たちは脱出口を探すべく右往左往しています。そこで、「私について来い」と言い放ち向かった先は・・・。
舜水樹や犬戎王ロゾなど周囲の予想はゴバ軍と趙国軍の包囲の切れ目を目指して一目散に逃げ出すことでした。しかし、楊端和は、まっすぐゴバ軍に突入していったのです。
それをみた犬戎王ロゾは、「…前略…絶体絶命のこの状況下で奴は…奴らにとって今日の最低限の戦果 ゴバの首を取るつもりだ」と感嘆します。
そして、見事にゴバを討ち取った楊端和は、「脱出するぞ 一人でも多くの生還を目指せ」と檄を飛ばし脱出を図ります。
ここでのポイントは、想定外の出来事である「予想外の敵の出現」(犬戎王ロゾと趙国・舜水樹の軍隊)において、どのように考え行動したか、という点にあります。
味方の兵士たちが狼狽えるなか、
①犬戎王の軍隊とは戦えない(≒現状では勝ち目がない)と瞬時に判断し、
②脱出を図る(逃走する)と宣言し、
③自分について来いと逃走方法を指示します。
時間をかけて考えたり、中途半端な指示をしたり、どっちつかずの行動をとると本当に全滅してしまいます。
瞬時に敗北を悟り撤退を宣言するところは、我々が最も見習うべき点といえるかもしれません。
経営学では「サンクコスト」(埋没コスト)といった概念で表現されます。これまでに費やした時間や費用を指す用語です。
サンクコストが大きければ大きいほど、撤退の決断が遅くなり、より悪い状況を招くというものです。たとえば、仕事、学習、資格試験、株式投資、その他ギャンブルなどにおいて、うまくいかないことがわかったとしても、これまで投入してきた時間や資金を考えるとなかなか諦められない…、その結果苦い思いをしたという経験がある人は少なからずいるのではないでしょうか。
残酷なようですが、変えられるのは「未来」だけです。
そのためには、過去のコストに縛られるのではなく、現在の行動の最善化を図る必要があるわけです。
わかってはいても、なかなか行動につながらないところは学問と現実の違いでもあります・・・。
それでも今回のエピソードは人間の考え方や行動に対して非常に示唆に富むものといえると思います。
なんとか、戦場から脱出できた楊端和たちですが、ロゾ軍と趙国軍の大追撃にあい行き止まりに追い込まれてしまいます。
いよいよ敗北と死を悟り始めたそのとき、楊端和が口を開きます。ナレーション部分の吹き出しが状況をよく表していますので併せて引用しています。
楊端和:「タジフ隊で中央を固めさせろ バジオウ・シュンメンは左右に動け …後略…」
※ナレーション[ ]
[山の民達が はっとしたのは楊端和の言葉ではなくその”声”であった 楊端和軍はここまで追いに追われ弱り果て憔悴しきっている さすがの山の民もここまでかと多くが覚悟を決めていた]
[だが 楊端和の声は現状に光を失った声ではなかったのだ」
楊端和:「顔を上げろ山界の雄達よ この戦いは盟友秦国の夢と存亡をかけた戦いだ 我らがしくじるわけにはいかない
[皆がさとった]
楊端和:「これまでの山界の力の結集はこの戦いのためであったと思い最後まで戦え 明日の太陽は我らの勝利を祝う太陽だ 全軍 突撃だ――」
[まだ山の王 楊端和は 勝つ気でいると――]
物事がうまくいっているときは、みな威勢がいいものです。
うまくいかなくなったとき、諦めかけたとき、楊端和の発言内容もさることながら、その「声」で兵士の士気を盛り立てます。
常に平常心。狼狽せずに淡々と。そして前向きな発言をおこなう。
その声や発言、堂々とした立ち居振る舞いに部下たちは勇気づけられ奮い立たされています。
リーダーやプロジェクトマネジャーとしてのひとつの理想的なスタイルといえるのではないでしょうか。
それでは、このあたりで終えたいと思います。
年明けには最新刊(53巻)も発売されますし、また漫画に学ぶ〇〇シリーズは続けていきたいと考えています。
もちろん、「キングダム」以外でも面白い漫画があればそちらも取り上げたいと思います。