スシロー2日間一斉休業から読み解く「平成の働き方」の終焉
こんにちは、さんちゃんです。
スシロー2日間一斉休業、約10億円の売上を捨てて実施する理由とは?
すでに数日前からニュースやインターネットで報道されていますのでご存知の方も多いと思います。
原則年中無休、年間売上高トップの回転寿司チェーン最大手「スシロー」(株式会社あきんどスシロー)が本日2月5日と明日2月6日の2日間、全国約500店舗について一斉休業することになりました。
500店舗というのは、商業施設に入っている店舗などどうしても休業が難しい一部店舗を除く全国の全店舗ということになります。
スシロー全体の年間売上高は1748億円。これを365日で割ると1日あたりおよそ4.8億円。2日間休むと単純計算で10億円近いダウンとなる計算だ。そうしたリスクを負ってでもなぜ一斉休業をするのだろうか。
出所)「FNNプライムニュース イブニング」2019年2月4日放送
その理由は、
スシローのホームページに極めて明快でわかりやすく表現されていますので、そちらを添付します。
出所)スシローのホームページより
「より働きやすい環境作りの一環」とあります。
休業日がほしいという従業員の声を尊重し、一斉休業とすることで現場の士気を向上させるねらいがあるようです。
元日一斉休業を発表して話題となった幸楽苑(幸楽苑ホールディングス)と同じように、スシローの2日間一斉休業は大きな話題をよんでいます。
ちなみに、幸楽苑の元日一斉休業については現場の従業員(多くはアルバイトスタッフ)とお客さんともに好評でした。
【参考】
ラーメンチェーンの働き方改革。「幸楽苑」大晦日元日休業、「日高屋」大半が非正社員の労働組合結成のインパクト
広がる元日休業! ラーメンに始まりコンビニ、物流、スーパー、外食産業で。人材確保と働き方改革に向けて
さらに幸楽苑ホールディングスは、元日一斉休業を発表した11月21日の株価1,986円から、本日の2,299円まで313円上昇しています(株価はいずれも終値)。
このことから株主からも一定の評価を得ていることがうかがえます。
もちろん、株価の上昇はさまざまな要因の複合的な結果ですので元日休業による影響の程度はわかりません(そもそも1月の売上については次回の決算に含まれるため)。
それでも、売上をゼロにする休業の実施を発表した後に株価が上昇しているわけですから、休業による単純な売上減少「以上の何か」を同社にもたらしたと考えることができます。
おそらく幸楽苑とスシローが求めているその何かには共通点があるように考えられます。
「平成の働き方」の終焉~バブルの後始末から、その先へ~
1989年に昭和が終わり、平成が始まりました。
ほどなくしてバブルが崩壊しました。
そのあと「失われた10年」、「失われた20年」、「失われた30年」などと呼ばれるようになりました。
平成の働き方とは「昭和の経済成長よもう一度」と夢見て右往左往しているもの
平成元年には「24時間働けますか」と自らを鼓舞したビジネス・パーソンが闊歩していましたが、バブルの崩壊を経て、金融機関神話の消滅、派遣社員など非正規雇用の拡大、不景気によるリストラ、就職氷河期を経験した若者のフリーター、ニート問題、少子高齢化のますますの進展、etc……。
結局のところ、平成の30年間は「昭和の経済成長よもう一度」と夢見て右往左往していた時期になります。
平成の働き方とは、極論すると、
過去の経済成長の僕(しもべ)として、24時間365日倒れるまで働くか、
低賃金・低社会保障の非正規雇用として働くか、
の2択でしかなかったのです。
多くの人にとってなんとかあの頃の右肩上がりの経済成長をと追い求めるか、ドロップアウトして諦めるかの2択です。
そして、一部の特異な才能を持つ若者は、起業をしたり海外にその活躍するステージを求めました。
そのことを時にうらやましく、時に疎ましく感じていながら大多数のビジネスパーソンは彼らを横目に自分たちもまた30年の年月が過ぎていたという感覚でしょうか。
そろそろバブルの呪縛から解放されるとき
このような昭和の経済成長を夢見てがむしゃらに働く経済モデルはいよいよ限界に来ています。
いまさら昭和の経済成長や平成初期のバブルを持ち出してくるのは古いと感じる人も少なくないと思います。
ところが、実は今でも働き方の多くの部分はその時代にひとつの完成をみたものです。
ひとつの例を紹介します。
「戦争を知らない子どもたち」(作詞・寺山修司、作曲・杉田二郎)という曲が発売された時期をご存知でしょうか。
最初に発売されたのは1970年です。
終戦してから25年経ったとき、当時の若者たちによって歌われたのです。
戦争を知る人と知らない人の両者が混在する社会から、知らない人が増え続ける社会となり、新しい価値観を確立するためのエネルギーが爆発したのが1970年代といえます。
平成のその先にくる働き方のテーマ~量から質への転換点~
同じように、現在は、バブル経済を知る人と知らない人の両者が混在する社会です。
そしてバブルを知らない人が増え続ける社会となっています。
「平成のその先へ」、当然に新しい価値観を確立するためのエネルギーが爆発する2020年代を迎えることがのぞましいと考えます。
そのひとつの大きな転換点が、24時間・365日営業に代表される「人海戦術」「物量作戦」の働き方からの脱却です。
そのため「労働時間≒量」で仕事を評価するシステムをいかに変えていくか、評価者の考え方や評価方法をも含めて変えていくのは大きな挑戦となります。
幸楽苑やスシローの施策は「休むこと」が、従業員、顧客、株主などに尊重されて、一時の売上減少を補って余りあるさらなるビジネスの成長へと導く可能性が示唆できます。
そこには「パラダイムシフト」や「コペルニクス的転回」といわれるような、常識や大前提、根本的価値観を覆すくらいのエネルギーが必要になります。
年中無休の外食チェーンが休日を設定したことは、ひとつの突破口となる可能性を秘めています。
ぜひ、幸楽苑やスシローにつづくアクションを起こす企業がでてくることに期待が高まっています。