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21世紀のマーケティングとは? 【感想】『マーケティングのすゝめ』

 
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こんにちは、さんちゃんです。

 

本日は21世紀のマーケティングについて、フィリップ・コトラー&高岡浩三(2016)『マーケティングのすゝめ 21世のマーケティングとイノベーション』中公新書クラレを紹介します。

 

マーケティングのすゝめ (中公新書ラクレ 567)

 

書籍の構成

本書は、マーケティングの世界的権威であるノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院のフィリップ・コトラー教授と、ネスレ日本株式会社の高岡浩三代表取締役社長兼CEOの共著となります。

 

第1章 21世紀のマーケティングとは何か

コトラー教授と高岡社長の対談形式で書かれており非常に読みやすくなっています。

内容は、本書の全体像や総論的な内容が書かれており、忙しい人は、第1章だけを読むことで全体のメッセージを理解することができます。

 

簡単に紹介すると、

 

マーケティングとは「顧客にとって価値のあるものやサービスを通して、顧客の問題解決のお手伝いをすること。」(27頁)です。

 

マーケティングとは「自分(自社)と自分以外との差別化を図り、ターゲット顧客層を絞り込むこと」(26頁)です。

そこでのポイントは、
「自分(自社)が提供できる価値(事業)は何なのか。
自分(自社)にとっての顧客は誰なのか。
自分(自社)の顧客が好み、あるいは欲しているモノやサービスは何なのか。
それをつかんだうえで、競合相手に勝つにはどうすればいいか。
こうした自問をし続けることが、マーケティングにとっては重要」(27頁)
となります。

 

難しく定義すると、
「マーケティングは顧客の持っている問題解決をするためのプロセス」(51頁)
となります。

 

あわせて20世紀と21世紀のマーケティングの違いについて、20世紀は「誰に何を売るのかを決めるプロセス」であり21世紀は「顧客の問題を解決することで、顧客の価値を高めるプロセス」に進化していることが語られています(33頁)。

 

第2章 マーケティングの変遷と進化

コトラー教授により、過去から現在におけるマーケティングの変遷と、これまでとこれからの進化過程について書かれています。

 

マーケティングの本質の進化

マーケティング1.0 製品中心
・・・製品の販売を目的とする。製品管理、1950~1960年代

マーケティング2.0 消費者志向
・・・消費者を満足させることに知恵をしぼる。顧客管理、1970~1980年代

マーケティング3.0 価値主導
・・・より良い社会を実現するという崇高な目標を掲げて消費者の価値観に訴える。ブランド管理、1990~2000年代
マーケティング4.0 自己実現
・・・個々の自己実現欲求を満たす製品やサービスへのニーズにフォーカスしてカスタマイズした商品やサービスを提供する。

 

21世紀のマーケティングとは、マーケティング3.0と4.0を指します。

 

20世紀のマーケティングが、モノを作り普及する視点、消費者ニーズに対応する視点であったのに対し、21世紀のマーケティングは、いずれも顧客の問題解決を主眼に新しい価値を提供しようとするマーケティングという特徴があります。

 

第3章 「顧客」と「顧客の問題」とは何か

第3章以降は高岡社長が執筆しており、自社(ネスレ)を含めて豊富な事例を引用してマーケティングという複雑な概念を分かりやすく紹介しています。

 

顧客とは?

20世紀の顧客・・・お客さま、買っていただく相手
21世紀の顧客・・・対外的な顧客(すべてのステークホルダー)と社内的な顧客(業務の価値提供先)を含む概念

 

21世紀は、対外的にはお客さま以外にも取引先、株主、地域住民などあらゆるステークホルダーを含み、さらに社内の顧客に言及している点で特徴となります。たとえば人事部では経営者からアルバイトまで「人」がすべて顧客といえます。

 

顧客の問題とは?

「顧客が認識している問題」と、「顧客が認識していない問題」の両方があります。

顧客が認識している問題は、マーケティング2.0までで解決可能なものです。
アンケート調査などでニーズを把握してそのニーズに対応した商品やサービスを提供することで比較的解決は容易です。

 

顧客が認識していない問題は、顧客自身が現状の不満に気づいていないが、後からふり返って解決されたことがうれしいと考えるような問題です。

 

事例としてソニーの「ウォークマン」が紹介されていますが、登場以前はホールか自宅以外で音楽を聴くという概念がなかったところ、ウォークマンが登場したことで「音楽を持ち運びたい」という顧客が認識していなかった問題を解決することになりました。

 

そのほか、1杯ずつドリップできるコーヒーメーカーを無料でオフィスや美容院に設置して缶コーヒーよりも安価でおいしいコーヒーを気軽に飲むことができる「ネスカフェ アンバサダー」の事例などが、コーヒーは缶コーヒーを自動販売機やコンビニで購入するものといった固定観念を変えることに成功した事例として紹介されています。

 

第4章 イノベーションとリノベーション

イノベーションとは、マーケティング3.0と4.0に対応する顧客が認識していない問題の解決から生まれる成果であり、リノベーションとはマーケティング2.0までに対応する顧客が認識している問題の解決から生まれる成果とされます。

 

テレビ、エアコン、冷蔵庫、お掃除ロボットなど歴史的変遷のなかで誕生した新しい商品やサービスの事例を紹介しながらイノベーションとリノベーションに分類して分かりやすく解説しています。

 

そして、リノベーションと20世紀のマーケティングの限界について、イノベーションと21世紀のマーケティングが求められている理由が紹介されています。

 

第5章 問題解決は「問題発見力」が出発点、第6章 コトラー・ビジネス・プログラムの全貌

第5章では、問題解決の出発点として問題発見力の大切さ、その第一歩が「物事を考えること」から始まるとしてネスレ日本の研修制度などが紹介されています。

 

また、第6章では、オンラインによるビジネス・プログラムとしてコトラー教授のマーケティングを学習できるビジネス・アイデアについて紹介されています。

 

読み終えての感想

まず第一に、なんといっても非常に読みやすい書籍だといえます。

プロローグで高岡社長が書いているように、難しい学術書・専門書ではなく実践に役立つ実用書として執筆されています。

 

第二に、事例が豊富で、自分(自社)だとどうすればいいのかについてたくさんのヒントがちりばめられています。

「ネスカフェ アンバサダー」や「キットカット」などの開発ストーリーは社長である高岡氏ならではの視点で臨場感あふれる事例紹介となっています。

 

最後に、豊富な実践事例ともにマーケティングの世界的権威であるフィリップ・コトラー教授の分析がすばらしく、学術的な視点から本書に厚みを加えています。

マーケティングの歴史的変遷や現在における課題が浮き彫りにされて、次の時代にどのようなマーケティンが求められているのかについてわかりやすく解説されています。

 

本書は新書という限られた分量のなかで、21世紀のマーケティングとして、自分自身、さらには自分の所属する部署、会社、業界、それぞれにあてはめて実践するための手引書となっています。

 

マーケティングを学問と実践の両方からバランスよく学習したい人、時間の限られているビジネス・パーソン、マーケティングを始めて学ぶ大学生や高校生などにおすすめの一冊です。

 

マーケティングのすゝめ 21世紀のマーケティングとイノベーション (中公新書ラクレ) [ フィリップ・コトラー ]

 

 

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